労働時間の延長の限度基準は、恒常的な長時間労働を改善するために設けられたものですが、業種によっては、予測していなかった注文が大量にはいり納期が間に合いそうにないときなどは、そのときに限り限度時間を超えて時間外労働を行わざるを得ないような状況が想定されます。
そこで、このような場合に備えて、三六協定を締結するにあたり、労使が妥結すれば、限度時間を超えた時間数を設定することができます。ただし、具体的に臨時の事情が生じた場合に限り、1日を超えて3箇月以内の期間、1年、それぞれの上限を伸張できます。回数は半数回に限ります(例:月単位に制限時間を設けていれば、年6回に限る)。適用も個人単位(事業所単位でない)で、制限時間数を超えそうな時点で、決められた方式(例:労使との個別協議)にて特別条項を適用します。この条項は、労働基準監督署への協定届に盛り込んでおく必要があります。
具体的な事由を挙げずに、単に「業務の都合上必要なとき」又は「業務上やむを得ないとき」と定めるなど、恒常的な長時間労働につながるようなものについては、「臨時的なもの」には該当しません。「特別の事情」は臨時的なものに限ることを徹底する趣旨から、特別条項付き協定には、1日を超え3箇月以内の一定の期間について、原則的な延長時間を超え、特別延長時間まで労働時間を延長することができる回数を労使協定で取り決めるものとし、その回数については、特定の労働者についての特別条項付き協定の適用が1年のうち半分を超えないものとすることが必要です。また、「特別の事情」については、臨時的なものに限られ、「臨時的なもの」とは、一時的又は突発的に時間外労働を行わせる必要があるものであり、できる限る詳細に取り決めなければなりません。