労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。また、労災保険においては保険給付のほかに、労働福祉事業も行っています。
◎業務上の負傷について
○事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
これは、所定労働時間内や残業時間内に事業場内において業務に従事している場合が該当します。この場合の災害は、被災労働者の業務としての行為や事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものと考えられるので、特段の事情がない限り、業務災害と認められます。なお、次の場合には業務災害とは認められません。
①労働者が就業中に私用((私的行為)を行い、又は業務を逸脱する恣意的行為をしていて、それらが原因となって災害を被った場合
②労働者が故意に災害を発生させた場合
③労働者が個人的なうらみなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合
④地震、台風など天災地変によって被災した場合(ただし、事業場の立地条件や作業条件・作業環境などにより、天災地変に際して災害を被りやすい業務の事情があるときは、業務災害と認められます。)
○事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合
これは、昼休みや就業時間前後に事業場施設内にいる場合が該当します。出社して事業場施設内にいる限り、労働契約に基づき事業主の支配管理下にあると認められますが、休憩時間や就業前後は実際に業務をしているわけではないので、行為そのものは私的行為です。この場合、私的な行為によって発生した災害は業務災害とは認められませんが、事業場の施設・設備や管理状況などがもとで発生した災害は業務災害となります。なお、用便等の生理的行為などについては、事業主の支配下にあることに伴う行為として業務に付随する行為として取扱われますので、この場合には就業中の災害に準じて、業務災害として認められない場合を除いて、施設の管理状況等に起因して災害が発生したかというものと関係なく業務災害となります。
○事業主の支配にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
これは、出張や社用での事業場施設外で業務に従事している場合が該当し、事業主の管理下を離れてはいるものの、労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事をしているわけですから事業主の支配下にあり、仕事の場所はどこであっても、積極的な私的行為を行うなど特段の事情がない限り、一般的に業務に従事していることから、業務災害について特に否定すべき事情がない限り、一般的には業務災害と認められます。
◎業務上の疾病について
疾病については、業務との間に相当因果関係が認められる場合(業務上疾病)に労災保険給付の対象となります。業務上疾病とは、労働者が事業主の支配下にある状態において発症した疾病のことを意味しているわけではなく、事業主の支配下にある状態において有害因子にばく露したことによって発症した疾病のことをいいます。例えば、労働者が就業時間中に脳出血を発症したとしても、その発症原因に足り得る業務上の理由が認められない限り、業務と疾病との間には相当因果関係は成立しません。一方、就業時間外における発症であって、業務上の有害因子にばく露したことによって発症したものと認められれば業務と疾病との間に相当因果関係は成立し、業務上疾病と認められます。一般的に、労働者に発症した疾病について、次の3要件が満たされる場合には,原則として業務上疾病と認めれられます。
①労働の場に有害因子が存在していること
この場合の有害因子は、業務に内在する有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業態様、病原体等の諸因子を指します。
②健康障害を起こしうるほどの有害因子にばく露したこと
健康障害は、有害因子へのばく露によって起こりますが、当該健康障害を起こすのに足りるばく露があったかどうかが重要です。このようなばく露の程度は、基本的には、ばく露の濃度等とばく露期間によって決まりますが、どのような形態でばく露を受けたかによっても左右されるので、これを含めたばく露条件の把握が必要となります。
③発症の経過及び病態
業務上の疾病は、労働者が業務に内在する有害因子に接触し、又はこれが侵入することによって起こるものなので、少なくともその有害因子へのばく露後開始後に発症したものでなければならないことは当然です。しかし、業務上疾病の中には、有害因子へのばく露後、短期間で発症するものもあれば、相当長期間の潜伏期間を経て発症するものもあり、発症の時期はばく露した有害因子の性質、ばく露条件等によって異なります。したがって、発症の時期は、有害因子へのばく露中又はその直後のみに限定されるものではなく、有害因子の物質、ばく露条件等からみて医学的に妥当なものでなければなりません。
通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡を言います。この場合の「通勤」とは、就業に関し、ⅰ住居と就業の場所との間の往復、ⅱ就業の場所から他の就業の場所への移動、ⅲ住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動、を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされていますが、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き「通勤」となります。このように、通勤災害とされるためには、その前提として、労働者の就業に関する移動が労災保険法における通勤の要件を満たしている必要があります。そこで、労災保険法における通勤の要件をまとめると次のようになります。
①「就業に関し」とは
通勤とされるためには、移動行為が業務に就くため又は業務を終えたことにより行われるものであることが必要です。したがって、被災当日に就業することとなっていたこと、又現実に就業していたことが必要です。この場合、遅刻やラッシュを避けるための早出など、通常の出勤時刻と時間的にある程度の前後があっても就業との関連性は認められます。
②「住居」とは
労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となるところをいいます。したがって、就業の必要上、労働者が家族の住む場所とは別に就業の場所の近くにアパートを借り、そこから通勤している場合には、そこが住居となります。さらに、通常は家族のいる所から出勤するが、別のアパート借りていて、早出や長時間の残業の場合には当該アパートに泊り、そこから通勤するような場合には、家族の住居とアパートの双方が住居と認められます。
③「就業の場所」とは
業務を開始し、又は終了する場所をいいます。一般的には、会社や工場等の本来の業務を行う場所をいいますが、外勤業務に従事する労働者で、特定区域を担当し、区域内にある数か所の用務先を受け持って自宅との間を往復している場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所となり、最後の用務先が業務終了の場所となります。
④「就業の場所から他の就業の場所への移動」とは
複数の異なる事業場で働く労働者については、一つ目の就業の場所での勤務が終了した後に、もう二つ目の就業の場所へ向かう場合の移動をいいます。
⑤「住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動」とは
転任に伴い、当該転任の直前の住居と就業の場所との間を日々往復することが当該往復距離(片道60キロメートル以上等)を考慮して困難となったため住居を移転した労働者であって、一定のやむを得ない事情より、当該転任の直前の住居に居住している配偶者と別居することとなったものの居住間の移動をいいます。また、配偶者がない場合の子との別居、並びに配偶者及び子がない場合の父母又は親族(要介護状態にあり、かつ、当該労働者が介護していた父母又は親族に限る。)との別居についても同様に取扱います。
⑥「合理的な経路及び方法」とは
就業に関する移動の場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び方法をいいます。合理的な経路については、通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となります。また、当日の交通事情により迂回してとる経路、マイカー通勤者が貸切りの車庫を経由して通る経路など、通勤のためにやむを得ずとる経路も合理的な経路となります。しかし、特段の合理的な理由もなく、著しい遠回りとなる経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。次に、合理的な方法については、鉄道、バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法を平常用いているかどうかにかかわらず、一般に合理的な方法となります。
⑦「業務の性質を有するもの」とは
以上説明した①から⑥までの要件をみたす往復行為であっても、その行為が業務の性質を有するものである場合には、通勤となりません。具体的には、事業主の提供する専用交通機関を利用する出退勤や緊急用務のため休日に呼出しを受けて緊急出動する場合などが該当し、これらの行為による災害は業務災害となります。
⑧「移動の経路を逸脱し、又は中断した場合」とは
逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことをいいます。しかし、通勤の途中で経路近くの公衆便所を使用する場合や経路上の店でタバコやジュースを購入する場合などのささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とはなりません。通勤の途中で逸脱又は中断があるとその後は原則として通勤とはなりませんが、これについては法律で例外が設けられており、日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるもの(ⅰ日用品の購入その他これに準ずる行為 、ⅱ職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育、訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為 、ⅲ選挙権の行使その他これに準ずる行為 、ⅳ病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為)をやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤となります。
保険給付種類(大) | 保険給付の種類 | こういうときは | 保険給付の内容 | 特別支給金の内容 |
療養(補償)給付 | 療養補償給付 療養給付 | 業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき(労災病院や労災指定医療機関等で療養を受けるとき) | 必要な療養の給付 | ― |
療養(補償)給付 | 療養補償給付 療養給付 | 業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき(労災病院や労災指定医療機関等以外で療養を受けるとき) | 必要な療養費の全額 | ― |
休業(補償)給付 | 休業補償給付 休業給付 | 業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき | 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額 | 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額 |
障害(補償)給付 | 障害補償年金 障害年金 | 業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったとき | 障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から131日分の年金 | (障害特別支給金) 障害の程度に応じ、342万円から159万円までの一時金 (障害特別年金) 障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分から131日分の年金 |
障害(補償)給付 | 障害補償一時金 障害一時金 | 業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったとき | 障害の程度に応じ、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金 | (障害特別支給金) 障害の程度に応じ、65万円から8万円までの一時金 (障害特別一時金) 障害の程度に応じ、算定基礎日額の503日分から56日分の一時金 |
遺族(補償)給付 | 遺族補償年金 遺族年金 | 業務災害又は通勤災害により死亡したとき | 遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245日分から153日分の年金 | (遺族特別支給金) 遺族の数にかかわらず、一律300万円 (遺族特別年金) 遺族の数等に応じ、算定基礎日額の245日分から153日分の年金 |
遺族(補償)給付 | 遺族補償一時金 遺族一時金 | ①遺族(補償)年金を受け得る遺族が ないとき ②遺族補償年金を受けている方が失権し、かつ、他に遺族(補償)年金を受け得る者がない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき | 給付基礎日額の1000日分の一時金(ただし、②の場合は、すでに支給した年金の合計額を差し引いた額) | (遺族特別支給金) 遺族の数にかかわらず、一律300万円 (遺族特別一時金) 算定基礎日額の1000日分の一時金(ただし、②の場合は、すでに支給した特別年金の合計額を差し引いた額) |
葬祭料・給付 | 葬祭料 葬祭給付 | 業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行うとき | 315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分) | ― |
傷病(補償)年金 | 傷病補償年金 傷病年金 | 業務災害又は通勤災害による傷病が療養開始後1年6ヶ月を経過した日又は同日後において(①傷病が治っていないこと②傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること)のいずれにも該当することとなったとき | 障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から245日分の年金 | (傷病特別支給金) 障害の程度により114万円から100万円までの一時金 (傷病特別年金) 障害の程度により算定基礎日額の313日分から245日分の年金 |
介護(補償)給付 | 介護補償給付 介護給付 | 障害(補償)年金又は傷病(補償)年金受給者のうち第1級の者又は第2級の者(精神神経の障害及び胸腹部臓器の障害の者)であって、現に介護を受けているとき | 常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、104,960円を上限とする)。ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が56,930円を下回る場合は56,930円。 随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、52,480円を上限とする)。ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が28,470円を下回る場合は28,470円。 | ― |
二次健康診断等給付 | 二次健康診断等給付 | 定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について異常の所見があるとき | 二次健康診断。 | ― |
注1)「保険給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に係るものです。 注2)表中の金額等は平成20年4月1日以降のものです。
保険給付を受けるためには、被災労働者又はその遺族が所定の保険給付請求書に必要事項を記載して、被災労働者の所属事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければなりません。
給付の種類 | 請求書の様式 | 提出先 |
療養 | 療養補償給付たる療養の給付請求書(5号) 療養給付たる療養の給付請求書(16号の3) | 病院や薬局等を経て所轄労働基準監督署長 |
療養 | 療養補償給付たる療養の費用請求書(7号) 療養給付たる療養の費用請求書(16号の5) | 所轄労働基準監督署長 |
休業 | 休業補償給付支給請求書(8号) 休業給付支給請求書(16号の6) | 所轄労働基準監督署長 |
障害 | 障害補償給付支給請求書(10号) 障害給付支給請求書(16号の7) | 所轄労働基準監督署長 |
遺族 | 遺族補償年金支給請求書(12号) 遺族年金支給請求書(16号の8) | 所轄労働基準監督署長 |
遺族 | 遺族補償一時金支給請求書(15号) 遺族一時金支給請求書(16号の9) | 所轄労働基準監督署長 |
葬祭 | 葬祭料請求書(16号 ) 葬祭給付請求書(16号の10) | 所轄労働基準監督署長 |
介護 | 介護補償給付・介護給付支給請求書(16号の2の2) | 所轄労働基準監督署長 |
二次健康診断等 | 二次健康診断等給付請求書(16号の10の2) | 病院経由、病院所在地を管轄する都道府県労働局長 |
「第三者行為災害」とは、労災保険の給付の原因である事故が第三者(注)の行為などによって生じたものであって、労災保険の受給権者である被災労働者又は遺族(以下「被災者等」といいます。)に対して、第三者が損害賠償の義務を有しているものをいいます。
第三者行為災害に該当する場合には、被災者等は第三者に対し損害賠償請求権を取得すると同時に、労災保険に対しても給付請求権を取得することとなりますが、同一の事由について両者から重複して損害のてん補を受けることとなれば、実際の損害額より多くの支払いを受けることとなり不合理な結果となります。加えて、被災者等にてん補されるべき損失は、最終的には政府によってではなく、災害の原因となった加害行為等に基づき損害賠償責任を負った第三者が負担すべきものであると考えられます。
このため、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」といいます。)第12条の4において、第三者行為災害に関する労災保険の給付と民事損害賠償との支給調整を定めており、先に政府が労災保険の給付をしたときは、政府は、被災者等が当該第三者に対して有する損害賠償請求権を労災保険の給付の価額の限度で取得するものとし(政府が取得した損害賠償請求権を行使することを「求償」といいます。)また、被災者が第三者から先に損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で労災保険の給付をしないことができることとされています。(これを「控除」といいます。)
(注)「第三者」とは、当該災害に関係する労災保険の保険関係の当事者(政府、事業主及び労災保険の受給権者)以外の方のことをいいます。
<参考> 労働者災害補償保険法第12条の4(第三者の行為による事故)
(1)政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けたものが第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
(2)前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。
※損害賠償責任について
第三者が被災者等に対して「損害賠償の義務を有していること」が第三者行為災害の要件となっていますが、これは、民法などの規定により第三者の側に民事的な損害賠償責任が発生した場合をいいます。
第三者行為災害に関する労災保険の給付に係る請求に当たっては、以下の書類を提出していただくことになります。
1 被災者等の方に提出していただく書類について
(1)第三者行為災害届
被災者等が第三者行為災害について労災保険の給付を受けようとする場合には、所轄の労働基準監督署に、「第三者行為災害届」を2部提出することが必要です。この届は支給調整を適正に行うために必要なものであり、労災保険の給付に係る請求書と同時又はこの後速やかに提出してください。なお、正当な理由なく「第三者行為災害届」を提出しない場合には、労災保険の給付が一時差し止められることがありますので、注意してください。
(2)第三者行為災害届に添付する書類
(1)の「第三者行為災害届」には、次に掲げる書類を添付してください。
「第三者行為災害届」提出時に添付する書類一覧表(表1)
添付書類名 | 交通事故による災害 | 交通事故以外による災害 | 提出部数 | 備考 |
「交通事故証明書」又は「交通事故発生届」 | ○ | ― | 2 | 自動車安全運転センターの証明がもらえない場合は「交通事故発生届」 |
念書(兼同意書) | ○ | ○ | 3 |
|
示談書の謄本 | ○ | ○ | 1 | 示談が行われた場合(写しでも可) |
自賠責保険等の損害賠償金等支払い証明書又は保険金支払通知書 | ○ | ― | 1 | 仮渡金又は賠償金を受けている場合(写しでも可) |
死体検案書又は死亡診断書 | ○ | ○ | 1 | 死亡の場合(写しでも可) |
戸籍謄本 | ○ | ○ | 1 | 死亡の場合(写しでも可) |
※念書(兼同意書)
労災保険の給付を受けられる方が、不用意な示談を行って労災保険の給付を受けられなくなったり、すでに受け取った労災保険の給付金額を回収されることなど、思わぬ損失を被る場合があります。このようなことのないように念書(兼同意書)には注意事項を文面で記載してありますので、内容をよくお読みいただき、その意味を十分に理解していただいた上で提出していただくようにお願いいたします。また、念書(兼同意書)には、労災保険により給付された金額を限度として労災保険の給付を受けられる方がもっている損害賠償請求権を政府が取得し、第三者に対して求償を行う場合があること及び個人情報の取り扱いに関しての同意の確認についても記載してあります。なお、念書(兼同意書)には、必ず労災保険の給付を受けられるご本人が署名してください。
※交通事故証明書
交通事故証明書は、自動車安全運転センターにおいて交付証明を受けたものを提出してください。なお、警察署へ届け出ていない等の理由により証明書の提出ができない場合には、「交通事故発生届(様式第3号)」を提出してください。また、交通事故以外の場合で公的機関の証明書等が得られるときは、その証明書等を提出してください。なお、念書及び交通事故証明書(もしくは、交通事故発生届)以外の添付プロバイダ書類については、表1の備考欄に該当する場合のみ必要となります。
2 第三者に対して提出を求める書類について
労災保険の給付を行う原因となった災害を発生させた第三者に該当する方は、「第三者行為災害報告書」を提出してください。この「第三者行為災害報告書」は、第三者に関する事項、災害発生状況及び損害賠償金の支払い状況等を確認するために必要な書類ですので、速やかに提出してください。
第三者行為災害における損害賠償請求額と労災保険の給付の支給調整方法については、「求償」と「控除」の2種類があります。なお、特別支給金については、労災保険の給付には含まれませんので、支給調整は行なわれません。
1 求償について 「求償」とは、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を、政府が保険給付の支給と引換えに代位取得し、この政府が取得した損害賠償請求権を第三者や保険会社などに直接行使することをいいます。
第三者行為災害が発生した場合、労働者の傷病等が業務上の事由又は通勤によるものである限り労災保険の給付が行われることとなっていますが、労災保険の給付はもともと人身損害についてのてん補を目的としてるものですから、民事損害賠償と同様の性質をもっています。また、被災者等の負った損失を最終的にてん補すべき者は、災害の原因となった加害行為等に基づき損害賠償責任を負った第三者であると考えられます。これらのことから、労災保険の給付が第三者の損害賠償より先に行われますと第三者の行うべき損害賠償を結果的に政府が肩代わりした形となりますので、労災保険法第12条の4第1項の規定によって政府は労災保険の給付額に相当する額を第三者(交通事故の場合は保険会社など)から返してもらうこととなります。
2 控除について 「控除」とは、第三者の損害賠償(自動車事故の場合自賠責保険等)が労災保険の給付より先に行われていた場合であって、当該第三者から同一の事由(注)につき損害賠償を受けたときは、政府は、その価格の限度で労災保険の給付をしないことをいいます。
同一の事由により、第三者から損害賠償を受け、さらに労災保険の給付が行われますと、損害が二重にてん補されることとなり、被災者等は計算上利益を生ずることとなってしまいますので、損害賠償のうち、労災保険の給付と同一の事由に相当する額を控除して給付を行い、損害の二重てん補という不合理を避けることとしているわけです。
(注)同一の事由について
民事損害賠償として支払われる損害賠償金又は保険金について、労災保険の給付と支給調整できる範囲については、労災保険の給付と同一の事由のものに限定されていますが、労災保険の給付に対応する損害賠償項目については、下記のとおりとなっています。
なお、労災保険では被災者等に対して、保険給付のほか特別支給金も支給することとしていますが、この特別支給金は保険給付ではなく労働福祉事業として支給されるものですから、支給調整の対象とはなりません。
労災保険給付と損害賠償項目の対比表
労災保険給付 | 対応する損害賠償の損害項目 |
療養補償給付 (療養給付) | 治療費 |
休業補償給付 (休業給付) | 休業によりそう失したため得ることができなくなった利益 |
傷病補償年金 (傷病年金) | 休業によりそう失したため得ることができなくなった利益 |
障害補償年金 (障害給付) | 身体障害によりそう失又は減少して得ることができなくなった利益 |
介護補償給付 (介護給付) | 介護費用 |
遺族補償給付 (遺族給付) | 労働者の死亡により遺族がそう失して得ることができなくなった利益 |
葬祭料 (葬祭給付) | 葬祭費 |
(※1)受給者の精神的苦痛に対する慰謝料及び労災保険の給付の対象外のもの(例えば遺体捜索費、義肢、補聴器等)は、同一の事由によるものではないので、支給調整の対象となりません。 (※2)( )内は通勤災害の場合です。
自動車事故の場合、労災保険の給付と自賠責保険等(自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済)による保険金支払のどちらか一方を受けることができます。この場合、どちらを先に受けるかについては、被災者等が自由に選べます。
しかし、先に自賠責保険等からの保険金支払を受ける場合(これを「自賠先行」と呼んでいます。)には、仮渡金制度や内払金制度を利用することによって損害賠償額の支払が事実上速やかに行われること、自賠責保険等は労災保険の給付より幅が広く、例えば、労災保険では給付が行われない慰謝料が払われること、療養費の対象が労災保険より幅広いこと、さらに休業損害が100%てん補されること(労災保険では60%)など被災者等にとって様々なメリットがあることから、自賠先行をおすすめしています。
自賠先行の場合には、同一の事由について自賠責保険等から支払われる限度額(注)まで労災保険の給付は控除されます。また、労災保険の給付を先に受ける場合には、同一の事由について自賠責保険等からの支払を受けることはできません。
なお、自賠責保険等に引き続いていわゆる任意保険(自動車保険又は自動車共済)による保険金支払を受けるか、若しくは労災保険の給付を先に受けるかについても、自賠責保険等と同様に、被災者等が自由に選べます。
(注) 自賠責保険等の保険金額の上限は死亡による損害の場合3,000万円、傷害による損害の場合120万円となっており、このほか後遺障害による損害について等級に応じて最高3,000万円まで支払われることとなっています。なお、重過失(被災者側の過失割合が70〜99%のとき)の場合を除き、保険金額の過失相殺は行われないことになっています。
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