トラブル回避のために雇用契約書で定めておくべき事項!
1.将来の人事異動に備えて
入社後に担当職務や勤務場所を変更する可能性が有る旨、および原則として会社の異動命令には従う義務が有る旨は、必ず雇用契約書に明記しておくべき事項です。
これを明確に定めた雇用契約書を取り交わしていない場合、職種限定または勤務地限定の雇用契約と解釈され、実際に人事異動を命じた時に、「入社時に聞いていない(当初の契約内容と違う!)」と言い出す社員が出るのです。
2.社員の故意又は過失により会社に重大な損害が発生した時に備えて
労働基準法では、社員や身元保証人との間で、労務提供債務の不履行または不完全履行に対する違約金や損害賠償額を定めることが禁止されていますが、これは違約金や損害賠償の“金額”を予め定めてはならないという趣旨であり、実際に会社に損害を発生させた社員に対して、その被った損害の賠償請求をすることまで禁止している訳では有りません。
ですので、雇用契約書と身元保証書には、実際に発生した損害に対する賠償義務を定めた条項を置くべきです。
3.万が一、会社都合の臨時休業に至った時に備えて
会社都合による休業の事由が会社の故意または過失によるものである場合、平均賃金の6割を休業手当として支払えば労働基準法違反は回避出来ますが、社員から残りの4割に対する支払請求を受けた場合は、民事的にはこれを支払わなければなりません。
なぜなら、民法第536条第2項(危険負担規定)に、そのように定められているからですが、この民法の規定は当事者間の特約が有ればその適用を排除出来る任意規定ですので、予め雇用契約書でこの危険負担規定の適用を排除しておけば、社員は残りの4割の請求をすることが出来なくなります。
4.労働者が雇用保険や社会保険への加入を拒否した場合
特に外国人労働者の場合、雇用保険や社会保険への加入を拒否することはよく有ります。
ですが、これを口頭でのやり取りだけで済ませていると、後々相手から「そんなことは言っていない」と言われた時に対抗出来ません。
また、行政官庁の調査において「なぜ加入させないのか?」と指摘された場合も、その対応に苦慮することになります。
よって、労働者が雇用保険・社会保険加入の説得に応じない場合は、その労働者の自筆で雇用保険や社会保険に加入したくない旨とその理由を書かせることが重要です。
5.賞与、退職金、慶弔見舞金等の支給対象外労働者がいる場合
就業規則に定めが有っても、契約社員・パートタイマー・アルバイトに対して賞与、退職金、慶弔見舞金などを支給するケースは稀です。
こういった場合は、雇用契約書に「支給しない」と明記することが必要です。
特に、就業規則に「この就業規則は会社に雇用される社員に適用する」などと規定されている場合は要注意です。
※最近の雇用契約(労働契約)内容に絡む労使トラブルは、身分保障が比較的しっかり為されている正社員よりも、むしろ契約社員、パートタイマー、アルバイトといった就業形態で雇用される非正規労働者の方が多いようです。
会社にとって、どうしても正社員より軽視しがちな契約社員、パートタイマー、アルバイトであるが故に、不測の労使トラブルを未然防止する為には、キッチリした雇用契約(労働契約)を締結しておく必要が有ると考えます。