1 法的根拠
裁量労働制を採用するには、労働基準法38条の3及び38条の4の要件を満たす必要があります。専門的職種・企画管理業務など、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある職種であることが条件です。当初は極めて専門的な職種にしか適用できませんでしたが、現在では適用範囲が広がっています。 厚生労働大臣指定職種も含めた主な職種は、①新製品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務 ②情報処理システムの分析・設計等の業務(いわゆるプログラミングは裁量労働の適用対象外である) ③記事の取材や編集を行う業務 ④公認会計士、弁護士、建築士など ⑤デザイナー ⑥経営企画担当 ⑦営業企画担当(個別の営業活動自体は裁量労働の対象外である) ⑧人事・労務担当 ⑨ゲームソフトウェアの開発 ⑩プロデューサー、ディレクター ⑪金融商品の開発 です。また、専門的職種では労働者の過半数を組織する労働組合(無いときは過半数の代表者)との労使協定、企画管理型職種では労使委員会での決議が必要です。
2 給与
みなし労働時間制のひとつであることからも明らかなように労働時間の概念は残されています。実労働時間にかかわらず、みなし労働時間分の給与を支給します。みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超える場合には労使で36協定の締結が必要であり、超過分の時間外労働に対する手当は支給しなければなりません。また、深夜および法定休日の勤務に対しては深夜労働および休日労働に対する手当を支給します。 長時間の時間外労働を行っていた労働者は、みなし労働時間の長さによっては裁量労働制の適用により「給与額が減る」場合があります。 実際の運用では、実労働時間が不確定であってもみなし労働時間分の給与を支給すればよいため、他の制度と比較してもっとも給与管理のコストは低いようです。
3 勤務時間
勤務時間帯は固定されず出勤・退社の時間は自由に決められ、実働時間の管理もされません。 一方で、過重労働による労災事故および過労死予防のための安全配慮義務として、2003年から使用者側に実労働時間の記録および管理が義務づけられることとなりました。 一定期間ごとの「職務成果」が評価され給与に反映される場合は、裁量労働適用以前より長く働かざるを得ない場合もあります。
4 職能との対応
職能に応じた社内資格を設定している企業では、特定の資格から上位に対して裁量労働制を適用することが多いようです。